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原題 INTANGIENCE
著者 Ernie Ross
ページ数 176
分野 マーケティング、ビジネス自己啓発
出版社 Forbes Books
出版日 2025/10/28
ISBN 979-8887506319
本文 タイトルの「インタンジェンス」とは無形の価値を意味する「インタンジブル」と、人間関係を科学する「サイエンス」を組み合わせた著者の造語であり、国連平和大学でも講義されたブランディング手法である。著者は人間関係や意思決定、物の価値の判断において、目に見えない感情的なつながりこそが重要だと考える。

本書では、ケーススタディとして、ガイアナのビール会社バンクスのエピソードが紹介されている。ガイアナでは隣国ベネズエラから違法に輸入された安いビールが市場を席捲し、地元のビール会社が苦境に立たされていた。バンクスの社長から依頼を受けた著者は、ガイアナで古くから愛されている歌の歌詞の一部を変えて、広告に使うことを提案する。実は、ガイアナとベネズエラの間には約200年前に国境紛争が勃発しており、この歌はベネズエラ相手に一歩も引かなかったガイアナの人々の誇りを歌ったものだった。目論見は当たり、バンクスは人々の愛国心をかきたてることに成功した。わずか3か月でベネズエラのビールはガイアナの市場から駆逐された。味や価格といった機能的なものではなく感情的なもの、つまりガイアナ人の誇りが地元ビールを購入させたのだ。

著者は無形の価値を理解し活性化させるインタンジェンスの3つの枠組みとして、①「目的の柱」(価値観を明らかにする内省的な質問)、②「会話の通貨」(共感できるメッセージを生み出す原則)、③「人間関係の科学」(真のつながりを築くためのテクニック)を紹介する。使用済みの歯ブラシにメッセージ性をつけて売ったり、ギャングのリーダーをバスケットボールの試合で改心させたり、ガイアナ初の女性大統領の選挙運動に関わったりと、著者のユニークな経験に基づいた理論には説得力がある。各章の末尾にはまとめの質問があり、内容を振り返りながら、自分ならどうするかを問いかけられる。

マーケティングに関わる人や組織のリーダーはもちろん、人間関係に悩む人にとっても学びの多い1冊となるだろう。