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原題 You Want What We've Got
著者 Jason Whittaker (Author)
ページ数 320
分野 メディア研究、デジタル文化論
出版社 Reaktion Books
出版日 2026/02/06
ISBN 978-1836391714
本文 過去30年間で、ビッグテック(大手IT企業)と大手報道機関の対立は、我々のニュースの受け取り方を大きく変えてきた。オールドメディアと呼ばれるテレビや新聞など従来の報道機関は、ソーシャルメディア、YouTubeなどの台頭により、近年衰退の一途をたどっている。本書では巨大テクノロジーが広告収益や聴衆を引き付ける戦略を駆使し、メディア企業に勝利した経緯を掘り下げている。

従来のジャーナリズムが変化に適応しようともがく一方で、フェイスブック、X(旧Twitter)インスタグラム, TikTokなどのソーシャルメディアは誰もが自由に参加できる“理想的な公共空間”を作り上げてきた。以前は大手メディアの記者が担っていた、世論をゆるがし政治権力に影響を与える発言を、個人が発することも可能になった。しかし、自由度が災いし誤情報やフェイクニュースの蔓延、炎上や個人攻撃などの多くの問題をはらみ、信頼性に疑いをもたれているのも事実である。
また最近ではAIがコンテンツの作成、配信、消費に革命を起こしつつあり、報道機関およびテック産業にさらなる変化が訪れようとしている。

本書ではテクノロジー分野のジャーナリストとしての経験豊かな著者が、ワシントンポスト、ニューヨークタイムズ、アトランティック、ロサンゼルスタイムズなど米国の主要メディアを例に、Meta(フェイスブック)、X、グーグル、マイクロソフト、OpenAIなどの巨大テック企業との関係を読み解いていく。さらに、ケンブリッジ・アナリティカによるデータ利用問題や、イーロン・マスク、エドワード・スノーデンといった情報環境の転換を象徴する人物にも触れながら、この両産業の歴史的背景と実情から浮かび上がる対立的な関係と、デジタル時代におけるニュースの不確かな未来について鋭く考察している。
ニュースの正確さは健全な政治、経済の運営に必須である上に、我々の生活にも影響をおよぼすものである。本書は民主主義にもとづいた報道の信頼性が問われる今の時代に、警鐘を鳴らす一冊である。