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原題 Taiwan
著者 Evan N. Dawley (Author)
ページ数 312
分野 歴史、文化人類学、国際関係     
出版社 Reaktion Books
出版日 2026/05/18
ISBN 978-1836391784
本文 本書は、台湾の人々に焦点を当て、親しみやすい文体、独創的なアプローチで読者を惹きつけつつ、十分な資料と徹底した現地調査にもとづいて、現代の台湾の政治や文化を紐解く。これまで英語圏で出版されている台湾史の多くでは、台湾が「東アジアのホットスポット(政治的に不安定な地域)」であるという点が語られてきたが、本書では台湾の人々の辿った道のりや彼らのアイデンティティ、独立国家としての希望について示している。

他国の侵略に翻弄されてきたように思われる台湾だが、先住民の時代には固有の文化を持っていた。それが17世紀になるとオランダをはじめとするヨーロッパ勢力や1661年から1860年の中国(清朝)の統治時代を経ることになる。しかしこのような時代がむしろ台湾の人々のアイデンティティの萌芽の契機になったと著者は述べる。続く50年もの日本の植民地時代も、蒋介石・蔣経国による世界最長の戒厳令の時代も、台湾の人々に苦難だけでなく多様性をも身に着けさせ、そして同時にアイデンティティも育んでいった。

本書は単に歴史を追うだけではない。著者のフィールドワークを通じて得た情報も満載なので、台湾の人々の生の声が聞こえるかのようだ。著者の見解は、彼らの主体性を強調し、台湾の脱植民地化を述べている点において、新しい視点と言えるだろう。読者にとっては、現代台湾社会の独自性と複雑さを考えさせる良いきっかけになり得る一冊だ。