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原題 The Medieval Guide to Healthy Living
著者 Katherine Harvey (Author)
ページ数 336
分野 歴史、健康法、衛生学
出版社 Reaktion Books
出版日 2026/04/01
ISBN 978-1836391845
本文 本書は、中世ヨーロッパの健康観を、現代の健康志向と重ね合わせながら、再考する一冊である。

中世の医学は、奇妙で不衛生、そして非科学的なものだと捉えられることが多いが、本書はそうした中世への固定観念に対して綿密な調査に基づき真正面から取り組み、中世社会の真の姿を探究している。そこで明らかになるのは、中世の人々が現代における私たちのように心身ともに健康で衛生的な生活を理想とし、病気の予防に努めていたという事実である。

中世では、環境、食事、運動、休息、排泄、感情の6つの要素が健康に影響を与えると考えられており、これらの要素を適切に管理することで、病気を予防できると信じられていたという。まさに、現代のウェルネスという考えだ。

さらに、本書では、これら6つの要素について、中世での実践の様子を歴史資料に基づいて検証している。検証の対象は幅広く、食事や入浴、衣服とその洗濯といった日常生活から、職業や性別、年齢層などの社会的背景、さらには現代にも通じる癌や糖尿病などの病気の理解にまでに及ぶ。こうした多角的な考察を通して、当時の人々の健康への意識だけでなく、中世の社会全体をも見渡せる。

本書の議論は、歴史資料に基づいて構成されており、論点が明確に整理されている。また、先人たちの逸話も多く紹介されており、中世の医療観や生活実践を具体的に理解する手がかりとなっている。

現代では、中世に対して奇妙で不衛生といったイメージを抱きがちだが、著者は、その背景には、現代の人々のほうが優れていると思いたいという願望があると考えている。本書は、そのイメージを修正することで、中世の人々の健康への意識の高さを再評価し、それが現代に生きる私たち自身のあり方を見つめ直す契機にもなることを示している。