ブックレビュー
| 原題 | In Search of Trade and Fortune |
|---|---|
| 著者 | Lydia Towns (Author) |
| ページ数 | 416 |
| 分野 | 歴史 |
| 出版社 | Reaktion Books |
| 出版日 | 2026/06/01 |
| ISBN | 978-1836391821 |
| 本文 | スペインを出航したクリストファー・コロンブスが大西洋を西回りで航行し、誰も到達したことのない大地に降り立ったのは1492年のことだ。これを機にヨーロッパ人が新大陸に殺到し、そこで得た香辛料、金、奴隷などで莫大な富を築きあげた。輝かしい新時代の幕開けである。 みなが思い描くこうした<大航海時代>像に一石を投じるのが本書だ。著者、リディア・タウンズは、大航海時代を突然起こった飛躍ではなく、大西洋一帯の航海術と交易にまつわる長い歴史の一章として位置づける。“新大陸を発見”したのも、金をもとめ外洋に繰りだしたのもコロンブスが初めてではない。ケルトやヴァイキングの時代から、人々は財宝や交易、移住地をもとめ大西洋を航行していた。ヨーロッパの商人たちもまた、商機をつかむため熱心に大西洋航路を広げていた。大西洋一帯にはすでに豊かな交易ネットワークがあったのだ。その延長上にあるのが、いわゆる<大航海時代>なのである。 本書でとりあげるのは主にクリストファー・コロンブス、そしてジョン・カボットとその息子セバスチャン・カボットである。まず、大西洋航海までのコロンブスの足跡を様々な角度から分析し、文献と照らし合わせながらその実像を浮かびあがらせる。コロンブスと同時期に活動していたのが、イギリスの商人ジョン・カボットだ。アメリカ大陸遠征で果たした役割、大英帝国にもたらした恩恵など、その功績についてはいまだに論争が絶えない。航海の知識、商業的野心、交易航路がどのようにコロンブスやカボット父子の旅路を形作ったのか、最新の研究を数多く取り入れながら検証する。 アメリカ大陸への航路は、 新たなる“発明”ではなく、大西洋の交易システムを“拡張”したものだ。そこに国家神話、人々の記憶、歴史の政治利用などがあいまって、こんにちの<大航海時代>となったのである。“偉大なる大西洋開拓者”という神話を脱し、連綿と続く海洋史を編みなおすのが、本書の狙いである。 |