ブックレビュー
| 原題 | Under Their Wing |
|---|---|
| 著者 | Pete Dunne |
| ページ数 | 192 |
| 分野 | 自然科学、歴史、アウトドア |
| 出版社 | Chelsea Green |
| 出版日 | 2026/10/06 |
| ISBN | 978-1645023975 |
| 本文 | 人類の歴史は鳥とともにあった。 3万5000年にわたり、鳥たちは、人間たちの食文化からファッション、寓話、文学、芸術、ことわざや比喩表現に至るまで、生活と文化のあらゆる領域に関わってきた。 それを見れば、いかに鳥たちが私たちの文化に影響を与えてきたのかがわかるだろう。本書のタイトルに使用された慣用表現「翼の下に置く(to take somebody under one’s wing)」は、相手が自立できるようになるまで育て導くことを意味する。だが今度は、私たちが鳥たちの運命を握っている。いまこそ人類が、地球の未来を考えなければならない。 本書では、まず、私たちの数千年におよぶ鳥たちへの関心をたどりながら、人間と鳥たちとの長きにわたる関係を照らし出す。鳥が人間と神々の間を橋渡ししていると考えられていたイメージは、古代エジプト時代にさかのぼり、鳥を愛したエジプトの人びとが、何百万羽もの鳥をミイラにしてファラオの墓に埋葬したことに言及する。また、日本の絵画に描かれる鳥や、さまざまな国の通貨、生活の器に描かれる鳥たちのほか、レンブラントの弟子のファブリティウスの絵画や、イギリスの博物学者ケイツビーの水彩画に描かれた鳥に触れる。19世紀後半、アーム・アンド・ハマー社の販売する重曹の箱にカラフルな鳥のカードが挿入されていたことは、あまり知られていないだろう。 本書の後半には、著者が愛する30種類の野鳥の生息地、生息数、渡りの状況などの観察記録が掲載されている。そのうちの数種は、現在絶滅危惧にある。「絶滅は自然の摂理であって、そのままにしておけばよい」と主張する人々もいるだろう。しかし、著者は言う。「人為的に促進された絶滅は自然ではない。ある種を絶滅に追いやることは、自然に対する犯罪であり、地球の管理者としての私たちの義務を放棄する行為である。」長年鳥類を観察してきた著者は、また、「わずかな機会さえ与えられ、人間の愚かな行為さえなければ、鳥たちは自力で維持可能な個体数を保つことができる」と希望をもつ。また、2019年のネイチャー誌が発表した「この50年で北米の鳥類個体数が30億羽も減少した」という報告についても、著者独自の視点からその意味を考察している。 本書は、野鳥に対して愛着を抱く著者による、鳥たちとの共生の記録であると同時に、鳥たちの繁殖地、食料源、そして渡りの経路が失われつつある現状への警告でもある。だが、私たち人間は、もともと自然の声に耳を傾けながら歴史を歩んできた。これから先も、鳥たちが人類のインスピレーションとなり、愚かな私たちを導いてくれることを著者は願っている。 レイチェル・カーソンによる人類への警告から60年。著者は、本書のなかでたびたび彼女の仕事をふりかえり、彼女の警告を現代に詩情豊か響かせようとしている。その営みは『センス・オブ・ワンダー』へのオマージュとも言えよう。 |