ブックレビュー
| 原題 | Crazy Like Us: The Globalization of the American Psyche |
|---|---|
| 著者 | Ethan Watters |
| ページ数 | 304ページ |
| 分野 | 社会学／精神医学 |
| 出版社 | Free Press |
| 出版日 | 2010/1/12 |
| ISBN | 978-1416587088 |
| 本文 | アメリカが世界に輸出した文化については、映画からジャンクフードに至るまで広く知られているが、グローバル化していく世界に与える厄介な影響についてはまだきちんと説明されてはいないのではないだろうか？ 本書では、アメリカ文化の蔓延の真の恐ろしさが、マクドナルドでも爆弾投下でもなく、人の心に無理やり踏み込むことだということを明らかにする。 アメリカは、新たな精神療法を生み出すリーダー的存在であり、精神疾患の苦痛や恥辱を和らげるに違いないという医学的裏づけに確信を持って向精神薬を輸出しているが、そういった治療による負の反応が、今明らかになりつつある。 数千年もの間、文化ごとの信条によって精神疾患のとらえられ方も千差万別だった。本書は、アメリカが開発した精神医療が、いかに土着の世界観を無視し、それを変える働きをしたかを明らかにする。ここ何諸Nかの間に、アメリカで普及した精神疾患は伝染病並みのスピードで世界中に広がった。そして、中国からタンザニアまでを旅した著者は、「ウイルス」はアメリカ人自身だという不吉な結論に至る。アメリカ人は精神疾患のアメリカ式治療法を紹介しつつ、病をばらまいたのだ。 津波に襲われたスリランカにいち早く駆けつけ、地元の人々の嘆きや苦しみや治癒力を悪意なく踏みつけにする欧米のトラウマカウンセラー。香港では、アメリカ版拒食症の流行によって多くの10代の若者が死に至り、末期手様相を呈している。また、世界最大手の製薬会社が行った数百万ドルを投じたPRによって、日本の鬱病が変えられてしまった実態も明らかにする。 アメリカは、薬とともに病をもマーケティングしたのだ。 |
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