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原題 The Man Without a Face: The Unlikely Rise of Vladimir Putin
著者 Masha Gessen
分野 評伝
出版社 Riverhead Books(Penguin Group)
出版日 2012/3/1刊行予定
ISBN 978-1594488429
本文 ウラジーミル・プーチンの半生と、その男の「支配下」にあるロシアの行方を追ったノンフィクション作品。

プーチンは1999年、当時の大統領エリツィンによって後継指名された。大統領就任後は、ロシアの民主化を期待する欧米の思いとは裏腹に、メディア統制を行い、政敵を追放し(ときには抹殺し)、選挙制度を変え、強力な中央集権化を進めた。こうしてロシアは再び強権国家へと逆行しはじめる。

著者は、この歴史をじかに見てきたモスクワ在住のベテランジャーナリストだ。民主化推進派の政治家である友人が何者かに暗殺された経験もあり、独裁的なプーチン体制に対する疑念は強い。

本書では、プーチンの謎に包まれた生い立ちやKGB時代、政府要職に就くまでの道のりが明かされるほか、とりわけ大統領任期初期にスポットを当て、短期間のうちにロシアが大きく変わった時代を振り返り、検証していく。執筆にあたっては、類書では取り上げられてこなかった文献・資料にあたり、関係者にインタビューし、徹底した取材を行った。ロシアをその地で見続けてきた著者ならではの、密度の濃いプーチン伝だ。