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原題 Los otros ninos del pijama de rayas. Los angeles del Holocausto(その他の“縞模様のパジャマの少年”たち〜ホロコーストの天使〜)
著者 Licia Lopez de Casenave
ページ数 192ページ
分野 ノンフィクション(戦争・ホロコースト)
出版社 Robin Books
出版日 2009/3/1
ISBN 978-8493698133
本文 『縞模様のパジャマの少年』、『ルトゥカのノート』、『アンネの日記』、『ライフ・イズ・ビューティフル』……これらの作品が世界中の人々に知られるほど有名になったのは、ホロコーストに収容された者の悲劇が、現代に生きる私たちの心を深くゆさぶるものだったからだ。さらに、ホロコーストの歴史をテーマにした作品が多々ある中で、これらの作品に共通する、ほかには見られない特徴、それは子供が主人公であること。子供たちのホロコーストでの経験は、私たちを驚かせ、微笑ませると同時に涙を流させる。私たちは、子供の持つ無邪気さが戦争の不正を明らかにしてくれること、それが狂った大人の社会が持つ残酷さとはまったくの対照的であることに改めて気づかされる。子供たちはいつも、不条理の中にあってもより良い世界を望み、そこへ導く可能性を持っているのだ。

本書は、第二次世界大戦中に起こった出来事について読者に幅広いヴィジョンを提供しようとしている。ホロコーストでは、実際にはユダヤ人だけではなく、政治家や知識人、少数民族や少数の宗教信者、身体障害者や精神障害者、同性愛者もナチスの犠牲者となっていて、著者はその点にも注目した。そのため本書では、第1部ではホロコーストでのユダヤ人犠牲者の不運や苦悩について詳述し(アンネ・フランクに関しての記述もある)、第2部では少数民族(ジプシーのロマ族)、特定の宗教信仰(エホバの証人)、レーベンスボルン計画下での子供たちなどについてまとめている。また、子供たちを守ろうとし、子供たちのために命を落とした大人、そして子供たちの命を救おうと努力した大人たちについての調査も行っている点が大きな特徴であろう。第3部には戦時中の出来事を相対的に理解できるよう年表を加え、犠牲者に関する情報、ニュルンベルグ法、および強制収容所についてのリストも記載している。