ブックレビュー ブックレビュー

原題 Wild
著者 Emily Hughes
分野 絵本
出版社 Flying Eye Books
出版日 2013/9/10
ISBN 978-1909263086
本文 森の中で育った少女が、人間の手により人間界に連れもどされたものの、新しい環境になじめず、結局は森に帰り、ワイルドに、幸せに暮らす物語。

ある日、森の中で動物たちが人間の赤ちゃんを見つける。赤ちゃんは鳥に言葉を、クマに獲物の捕まえ方を、キツネに遊びを教わって、森の動物たちの愛情を受けながら少女へと成長していく。ところが、少女が幸せな暮らしを送っていたある日、その事実が人間に知られることとなり、大きなニュースになってしまう。少女はすぐさま人間の家族に引き取られ、人間の言葉や食事のマナー、遊びまで教え込まれるが、少女にとってそれは苦痛以外の何物でもなかった。少女はやがて家を飛び出し、森の「家族」のもとへと帰っていく。まるでそれがごく自然なことであるかのように。そして少女は、野生の生活を心から満喫する。

森の中と人間社会の中とでは、少女の表情が全く違う。森の中では実に生き生きと、いかにも楽しそうに暮らしているのに対し、人間社会の中では不満と不安が渦巻いて、今すぐにでも爆発しそう。また、実際は脅威だらけのはずの森の中の様子が、少女をやさしく見守るように描かれている点も印象的。センダックの『かいじゅうたちのいるところ』を彷彿とさせる大胆かつ繊細な絵のタッチには、子どもの冒険心をくすぐるものがある。