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原題 The World Atlas of Street Art and Graffiti
著者 Rafael Schacter
分野 社会
出版社 Yale University Press
出版日 2013/9/3
ISBN 978-0300199420
本文 壁に描かれた落書きアート(グラフィティ)が最初に出現したのは20世紀初頭、ラテンアメリカでのことだ。1950年代にはアメリカ西海岸、東海岸のラテン系ギャングがスプレー缶を使ったグラフィティを描き始め、とりわけロサンゼルスの「cholo(メキシコ系ギャング)」のグラフィティが台頭していった。今日、都市芸術は世界中のあらゆる場所で見られるが、そのスタイルは非常に複雑で凝ったものになりつつある。事実上、世界一広く、オープンな場所で作品を披露することで、アーティストたちは拒否することができない世間に対して信念や想像力を具現化する。良心的にいえば、都市芸術とは、単純にスローガン、政治的アクション、個人的な宣伝を目的とした美的表現ではなく、多様な街、建物が林立する大都市が触発する創造性と結びついた芸術の形なのである。

本書は国際的な都市芸術を扱ったガイドブックの決定版である。ニューヨークのエスポからロサンゼルスのシェパード・フェアリー、パリのインベーダーからブラジルのパンドルフォ兄弟、オーストラリアのアンソニー・リスターに至るまで、世界で最も影響力を持つアーティストたちに注目し、彼らの作品が見られる主な場所を掲載している。また、今も路上で活動する100名を超えるアーティストを国、都市別に分類し、彼らの経歴や作品を紹介するほか、各地のストリートアートやグラフィティの変遷がアーティストの背景とともにわかるようになっている。