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原題 Origins of the Specious: Myths and Misconceptions of the English Language
著者 Patricia T. O'Conner, Stewart Kellerman
ページ数 288ページ
分野 雑学
出版社 Random House
出版日 2009/5/5
ISBN 978-1400066605
本文 常識として定着している英語阜サ、単語、文法知識に語源学のメスを入れ、その意外な真相を軽妙なユーモアとともに紹介する。本書に満ちあふれた新事実の数々は英語を学んでいる人にはこたえられないだろう。

驚きの連続は冒頭から止まらない。たとえば、伝統と格式を誇るイギリス英語からすると亜流として蔑まれがちなアメリカ英語の発音であるが、実は1700年代のイギリス英語の発音を継承しているのはアメリカ英語だった。本家で失われた「R」や「A」の発音のみならず、その他にも多くの言語的な伝統を保存しているのはアメリカ英語であることが明かされる。

ネイティブたちですら信じている英語の一般常識が次々にひっくり返されて、実はそれらは都市伝説やウワサの類であったという真相が次々に飛び出してくる。世間で「正しい」とされる文法やスペリングが多分に恣意的に決められてきたことや、卑俗な単語があえてその語源を歪めて浄化されてきたこと、そしてフェミニストや黒人団体への過剰な政治的配慮から言葉狩りが行われること、また、単なる誤解や聞き違いから生まれるもっともらしい語源など、広汎な話題が取り上げられている。

全編に満ちた驚きの事実を知るたびに、固定観念に亀裂が走る快感を覚える。ただの雑学本としても読めるが、言葉や阜サの社会的な評価が時として政治的な目的や、無知から恣意的に歪められることがあることを説き、その意味では文化的な警鐘としても読める。