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原題 The Paper Trail: An Unexpected History of the World's Greatest Invention
著者 Alexander Monro
分野 科学/技術/歴史/文化
出版社 Allen Lane
出版日 2014/5/1
ISBN 978-1846141898
本文 中国で発明された紙の製法が世界に広まる道筋を丹念にたどり、紙がどのようにして文化と宗教の爆発的発展の導火線となったかを描く。

中国の紙は、表面がなめらか、材料が安く手に入る、大量生産できる、持ち運びに便利、製本しやすいなどの理由から、世界各地でそれまで使われていた印字素材(パピルス、竹、木簡、羊皮紙など)に取って代わるようになる。

その製法は7世紀には朝鮮半島を経て日本に伝わり、8世紀にはイスラム圏へ、12~13世紀にはヨーロッパにまで広まった。そこから宗教改革、グーテンベルグの活版印刷の発明、ジャーナリズムの発達などにより、紙は人々の生活に浸透し、誰もが科学、音楽、文学などの幅広い文化を享受し、情報を交換できる時代をつくった。紙の旅路のひとつの到達点が私たち読者だ。デジタル時代、紙の本は次の時代に生き残れるだろうか。

数多くの印象的なエピソードとともに、紙をめぐる冒険物語、東西文化交流の歴史絵巻として楽しめる一冊。