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原題 Fizz: How Soda Shook Up the World
著者 Tristan Donovan
分野 食文化/ビジネス
出版社 Chicago Review Press
出版日 2013/11/1
ISBN 978-1613747223
本文 科学者たちが「元気の出る強い気泡入りの水」を認知したのが18世紀初めのこと。現在に至るまで揺るぎなく続く炭酸飲料産業の始まりである。

ヒポクラテスの時代、天然の炭酸水は病気や加齢のための万能薬、また、結婚を祝福するためのものととらえていた。しかし、1800年代初めに最初のソーダ・ファウンテンが誕生したことで、それまで主に富裕層だけが温泉で楽しんでいた炭酸水が、誰にとっても日常的な楽しみになった。

19世紀後半に登場したコカ・コーラの最初の広告は、「スッキリ! さわやか!」と砂糖たっぷりの飲料を派手に宣伝するもので、それが世界制覇をねらう会社の出発だった。本書では、禁酒運動、訴訟、ペプシのような競合他社、セブンアップやマウテン・デューのようなアンチ・コーラ商品の撃退、宇宙開発競争への参加などを通して、このブランドの成長が描かれる。

その成長過程では、炭酸飲料の甘く、粘着力のある魅力が国民を形作ってきた様や、単なる清涼飲料水が私たちの味蕾を刺激し、いかに世界を変えてきたかがうかがえる。炭酸飲料の歴史は、華やかな幻想、きらめく夢、巨額のお金、妙薬、広がりゆくウエストサイズで表される現在の世界の物語でもある。近年は、肥満の蔓延を助長しているとして風当たりが強い炭酸飲料だが、私たちがソーダを手放す日はやってこない運命にあるようだ。