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原題 The Upside of Downtime: Why Boredom is Good
著者 Sandi Mann
分野 健康/心理学
出版社 Robinson
出版日 2016/3/22
ISBN 978-1472135995
本文 今の世の中で「することがない」という状況はほぼあり得ない。ネット、スマホ、ゲーム、SNS、動画の見放題サービスなど、世の中にはコンテンツがあふれている。にもかかわらず、人々は以前にも増して退屈している。人の脳は、刺激が増えるほどより強い刺激を渇望するため、常に目新しい楽しみに囲まれていると、ルーティンと繰り返しに耐える能力が失われていく。私たちの社会は、退屈を回避しようとするあまり、ますます退屈に苦しむ人間を生み出しているのだ。

育児や教育の現場にすら「退屈恐怖症」が蔓延している。「育ち盛りの子供を無駄に退屈させると脳が発達しなくなる」と考える親たちが増えたのか、子供たちは幼いころから過剰なほどの玩具や教材を与えられている。しかし、「ポスターや写真で楽しくディスプレイした教室」と「なんの工夫もない箱のような教室」で同じ授業を行ったところ、後者で授業を受けた生徒のほうが高い集中力を示した。

退屈を恐れる必要はない。退屈には、現状に満足して向上心を失ってしまうことへの抑止機能がある。つまり、退屈するからこそ向上心が芽生えるのだ。退屈な作業をしているときほど、クリエイティブな発想が芽生えるということを証明した実験データもある。

退屈を味方につければ、私たちの人生はもっと豊かになる。