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原題 Philosophers at Table: On Food and Being Human
著者 Raymond D. Boisvert, Lisa Heldke
分野 文化/思想
出版社 Reaktion Books
出版日 2016/2/15
ISBN 978-1780235882
本文 私たちに欠かすことのできない、最も重要な行為「食」。「我々はどのように食べるのか?」という一見単純な問いは、食物を採取し、調理を施し、味を洗練させ、適切な栄養を補うという一連のヒトの行為のみならず、環境破壊で脅かされる食品の安全やさまざまな食文化という「食」の社会的・文化的側面をも浮かび上がらせる。

本書では、「食べることはこのうえない哲学的行為である」という考えのもと、日常の重要な要素である「食」について哲学的な論拠を探り、人間は単に知性のある生物というだけではなく、胃袋を持つ生物であることを示す。また、哲学史上の思想だけではなく、多くの神話、文学作品、歴史や映画を分析しながら、「食」の哲学についての論証を重ねていく。

さらには、アクラ(ガーナ)のファストフードと、スペインの高級レストランでの「分子ガストロノミー」による料理を比較しながら、アートとしての「食」についても考察する。そもそもアートとは一体何なのか? 食物はアートであるといえるのだろうか? ヘーゲルやカントなど、哲学史上における美学の概念をたどりながら、食における美的尺度についても考える。