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原題 Death: From Dust to Destiny
著者 Richard Brilliant
分野 美術/建築/考古学
出版社 Reaktion Books
出版日 2017/7/12
ISBN 978-1780237251
本文 “誕生”と“死”という言葉は、長い間私たちの生物学的生命の境界線を意味してきた。だが、人が生きた軌跡は時間的な境界を超えることができる。肉体が滅びてから長い時間が過ぎても、その精神は残された者たちや後世の集合記憶の中に生き続けるのだ。そのように現世に残るものは、儀式で創り出され、記念碑や死亡の記録によって強固なものとなり、美術や建築物をとおして伝えられてきた。

生なくして死は成立しない。死を深く考えることで生を考えるきっかけにもなる。“私”はどこから来てどこへ向かうのか?“私”なきあとの“私”は、別の“私”として存在し続けるのだろうか? さまざまな地域、宗教による世界観の違いは、哲学的な問いにもつながっていく。解説とともに登場する多彩なテキストや美しい写真は、眺めるだけでも楽しい。本書では、美術や建築、その歴史に関する知識を得られるのはもちろんのこと、人間の知性と創造力の豊かさにあらためて感嘆を覚える。