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原題 GameTek: What games can teach us about life, the universe and ourselves
著者 Geoff Engelstein
分野 ライフスタイル/ホビー/ゲーム理論
出版社 HarperCollins Publishers Australia
出版日 2019/1/29
ISBN 978-1460757376
本文 本書は、有名ボードゲームの製作者として活躍している著者が、ボードゲームを製作するうえで欠かせない、数学、物理学、心理学の法則を解説しながら、ゲーム理論と人生を解説するものである。

本書では最初に、じゃんけんや三目並べといった長い歴史を持つゲームを数学的に解説している。じゃんけんの勝敗は運だけに左右されると思われがちだが、実験してデータを収集すると、じゃんけんを続けて行う場合、勝ったあと、負けたあとで、次に相手が何を出すかはある程度予測できる。

また、サイコロのそれぞれの目が出る確率は6分の1であるが、サイコロの数を増やしていくと、出る目の合計は期待値に近くなる(サイコロを2つ振ると合計が7になる確率が上がり、3つ振ると合計が10に、4つ振ると合計が14になる確率が上がる)。

ボードゲームに隠されている法則は数学だけではない。「囚人のジレンマ」は社会科学、心理学で研究されているゲーム理論だ。お互いに協力する方が協力しないよりも良い結果が得られることが分かっていても、協力しない者が利益を得る状況では協力しなくなってしまうのだ。

著者はまた、「シュレディンガーの猫」、「エントロピー」、「熱力学第二法則」を始めとする物理学の原則が、どのようにボードゲームに活かされているかも具体的に説明している。

ボードゲームは単なる娯楽や時間つぶしと思われているが、その構成要素を丁寧に紐解いていけば、数学、物理学、心理学の英知が結集されていることが分かる。そして、これらの要素はボードゲームだけでなく、わたしたちの人生にも関わるものだ。

例えば、「モンティ・ホール問題(閉まった3つのドアのうち、当たりは1つ。回答者が1つのドアを選択した後、残り2つのドアから外れのドアが1つ明かされる。その後、回答者は選択するドアを変更しても良い)」では、人間は最初の選択を変えずに失敗するよりも、最初の選択を変更して失敗することをより恐れることが分かる。何かの選択に悩むとき、最初の選択に固執する傾向と理由を理解していれば、より適切な選択を行うことができるはずだ。

本書はボードゲームに留まらず、日々の生活にも応用できるたくさんのゲーム理論を教えてくれる。各章で取り上げられている数学・物理学・心理学の例も興味を引かれるものばかりで、ボードゲームに興味のない読者も十分に楽しめる内容となっている。ゲーム理論をビジネスや経済に応用する書籍が多いなか、本書はゲーム理論の基礎を具体的に楽しく解説しているため、幅広い層の読者を獲得できるはずだ。