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原題 The Origins of the Modern World
著者 Robert B. Marks (Author)
ページ数 301
分野 歴史、経済、政治、人文科学
出版社 Rowman & Littlefield
出版日 2019/07/10
ISBN 978-1538127032
本文  わずか250年前、世界の人口は10億にも満たず、アジアの2か国、中国とインドが世界の経済的生産額の3分の2を占めていた。それから短期間で世界の人口は70億に膨れ上がり、かつてアジアが保持していた経済のカードは西洋諸国と日本の手に渡った。そして今また中国とアジアの台頭に伴い、世界はかつての秩序に戻っていくのだろうか?

 この世界を理解するには国民国家と産業の成り立ちだけでなく、なぜヨーロッパ流の社会の組み立て方が広まるようになったのかを理解しなければならない。ヨーロッパの台頭した理由はキリスト教であり、啓蒙運動であり、ギリシャの遺産(民主主義、科学的思考)だとされている。ヨーロッパは世界の中で例外的存在であるという考えは社会科学での基本概念となった。1800年ごろまでの世界はアジアとヨーロッパが幅広い共通点を持って並び立っていたにもかかわらず、ヨーロッパの歴史のみならず世界の歴史までもがヨーロッパ中心主義の視点から語られる物語(メタナラティブ)になってしまった。その偏った観点から脱却し新しい歴史の物語を構築するのが、歴史家としての務めである。

ヨーロッパの繁栄はその地理的、歴史的、文化的特殊性、優越性の結果などではなく、世界の様々な場所で別々に起きた出来事(例えば中国の経済と人口の増大やイスラム世界の拡大など)が寄与している。また、15世紀初めに中国で銀が貨幣に鋳造されたことと、同じ世紀の終わりに大航海時代の始まりとともに新世界で大量の銀が見つかったという二つの出来事が結び付き、絹や陶磁器、スパイスなどが世界に広まっていくきっかけになった。このように歴史は偶発性と巡り合わせを抜きにしては語れないと筆者は主張する。筆者が試みている新しい歴史の物語(ナラティブ)は化石燃料以前の1400年ごろ、まだ農業主体の旧体制時代に端を発し、産業革命を経て現代に至り、さらには未来を展望する。アジア大陸、アメリカ大陸、アフリカ大陸の各地での民俗学的地誌学的研究成果をもとに、筆者が構築しようとしている斬新な歴史観、世界観は現代の諸問題を解決する手掛かりとなるだろう。