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原題 THE LONG COVID HANDBOOK
著者 Gez Mendinger & Prof Danny Altman
ページ数 320
分野 臨床医学、時事、社会問題
出版社 Cornerstone Press
出版日 2023/02/01
ISBN 978-1529900125
本文 2019年、中国の武漢で発生が報告された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症(COVID-19)は2020年に入り、パンデミックとなった。その後も感染者の増減を繰り返しながら流行が継続している。ただ、医療関係者の努力は言うまでもなく、ワクチンや治療薬(2022年11月22日、日本でも国産の飲み薬「ゾコーバ」の使用が承認された)の開発により、感染や重症化はコントロールできるようになった。それゆえ、「治るなら、かかったって構わない」と考える人もいるようだ。しかし、「Long Covid」が新たな問題となっている。
「Long COVID」は、もともと英国の患者がSNSで用いた言葉で、米国では「Post-Acute Sequelae of SARS-CoV-2 infection(PASC)」や「Post-acute COVID-19 syndrome」とも呼ばれる。なお、2021年10月6日、WHOは「SARS-CoV-2の感染が確認されたか、感染したと考えられる人が、COVID-19発症から3カ月の時点で少なくとも2カ月以上症状が持続し、他の診断で説明がつかない場合」を「post COVID-19 condition」と定義した。日本では「COVID-19罹患後症状」と和訳されている。「Long Covid」に関する情報はいまだ不明な点が多く、当事者以外にはあまり注目されていないこともあり、患者が会社の同僚から「甘えているだけだ」といった心無い言葉を投げかけられたり、医療関係者でさえ「気のせい」と済ませることがあるという。
本書では、2020年3月にCOVID-19を発症して以来、自身も「Long Covid」に悩まされてきたGez Medingerが調査や取材をもとに「Long Covid」の症状、原因、影響、治療の実態を明らかにし、これにDanny Altmannが専門的な解説を加えていく。さらに、よくある質問を取り上げ、Q&A形式で医師が答える。患者のみならず、患者を支える家族や仲間、臨床医に贈る一冊。ぜひ、「Long Covid」、ひいてはその患者に関する理解を深めていただきたい。