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原題 THE STORY OF FOLLIES
著者 Celia Fisher
ページ数 398
分野 美術、建築
出版社 Reaktion Books
出版日 2023/01/27
ISBN 978-1789146356
本文  フォリーとは近代ヨーロッパの時代に、庭園の装飾を目的につくられた建物のことである。通常の家屋とは異なり、居住や風雨をしのぐといった機能は考慮されていない。また、その外観は強く人目を引くような奇抜なデザインであることが多い。
 フォリーは16世紀末から17世紀にかけて建てられるようになり、18世紀から19世紀にその全盛を極めた。英イングランド・コッツウォルズ地方にある「ブロードウェイ・タワー」や北フランス・エルムノンヴィルにあるジャン・ジャック・ルソー公園内の「哲学の神殿」などが有名である。またアイルランドでは1845年から1849年にかけてジャガイモ飢饉が発生した際、各地にフォリーがつくられた。これはフォリーを建設することで、貧窮に喘ぐ人々を雇用して救済するのが目的だった。つまりフォリーが、国民を救うための福祉政策の一翼を担ったわけである。そして数は少なくなったが、20世紀以降も現代建築家らの手によって、公園などの公共の場所にフォリーが建てられている。
 建築物としての実用性を無視し、純粋な芸術性を追求したフォリーには、当時の時代性が反映されており、優れた歴史的資料でもあると著者は言う。本書はこうしたフォリーの中に刻まれた歴史物語を、カラフルな写真とともに紐解いていく。
 フォリーの中には中国風の寺院や廃墟と化した修道院、古代エジプトのピラミッドを模したものなど、きわめて個性豊かな建物が少なくない。そんなユニークなフォリーを通じて、近代ヨーロッパの建築様式やその美術性についても学べる一冊である。