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原題 KUNSTKAMMER
著者 Jeffrey Chipps
ページ数 336
分野 芸術、歴史
出版社 Reaktion Books
出版日 2022/10/17
ISBN 978-1789146127
本文 クンストカンマー(ドイツ語で「ヴンダーカンマー」)とは15世紀から18世紀の欧州でつくられた、宝物殿あるいは珍品室ともいうべき部屋のことである。日本語では「驚異の部屋」や「不思議の部屋」と訳されることもあり、そこに集めれた品々は、他に類をみない珍しいものばかりだ。

クンストカンマーがつくられた当時は、まさに発見の時代と呼べる時勢だった。ヨーロッパの帆船がアフリカやアジア、南北アメリカから、現地で得た数々の珍奇な食物や美術品を乗せて寄港してきた。ポーランド出身の天文学者ニコラス・コペルニクスやドイツの天体物理学者ヨハネス・ケプラーなど多くの科学者たちが、物質世界や人体の謎を解き明かそうと学術的探求を試みた。珍妙な物品を求め、新奇な現象を探ろうとする、このような欧州の文化がクンストカンマーの作成へと繋がったと考えられる。

クンストカンマーには自然物から人工物まで、珍しいものであれば分野を問わず収集されている。また、そうした珍品をおさめたクンストカンマーは、今日の現代博物館の前身ともいえる存在である。イギリスの大英博物館も、アイルランド王国出身の医師だったハンス・スローン卿の収集品が基になっているのは、知る人ぞ知る逸話である。

本書では北ヨーロッパにおける近代美術の研究を専門とする著者が、クンストカンマーに所蔵された様々なコレクションに関して、歴史的・芸術的な観点から考察していく。