ブックレビュー
| 原題 | The Art of Anatomy in Medieval Europe |
|---|---|
| 著者 | Taylor McCall |
| ページ数 | 240 |
| 分野 | 歴史、医学、美術、芸術 |
| 出版社 | Reaktion Books |
| 出版日 | 2023/05/01 |
| ISBN | 978-1789146813 |
| 本文 | 解剖学とは、人体の構造や形態、それぞれの部位の仕組みや役割を解き明かそうとする学問である。その源流は古代のエジプトやギリシャの時代にまで遡り、その歴史の中で、医師や僧侶、芸術家らの手により、人体を描いた数多の略図や図画、絵画などが現代にまで残されてきた。そして、その中から中世ヨーロッパの時代のものを厳選し、当時の人々が人間の身体をどう認識していたか深く考察することが、本書の試みである。 解剖学と言えば、「万能の天才」とも称されるルネサンス期の芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチや、神聖ローマ帝国生まれの解剖学者で医師でもあったアンドレアス・ヴェサリウスの名が挙げられることがある。一般的には、彼らこそが科学的な人体解剖を行った最初の人物であり、「近代解剖学の祖」と考えられているが、この見解に著者は異を唱える。著者いわく、彼らの業績は、その当時までの多くの先人たちが築き上げてきた見識に依拠したものである。 本書はこのような定説への反論はもとより、解剖学という学際的な分野について、多くのカラフルな挿し絵を参照しながら、さまざまな角度から学術的な分析を行なっている。人体の構造解析の歴史に興味のある一般の読者や医療関連分野に従事する人々だけでなく、中世ヨーロッパの芸術や文化に関心のある方にもお勧めできる一冊だ。 |
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