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原題 Astray
著者 Eluned Summers-Bremner
ページ数 320
分野 歴史、地理、民族学、文化人類学
出版社 Reaktion Books
出版日 2023/05/01
ISBN 978-1789147049
本文 “Astray(アストレイ)”の文字通りの意味は「道に迷って、放浪して」、あるいは「正しい道やコースから逸脱して」であるが、本書に登場する様々な形態の“アストレイの民・集団(以下「アストレイ」)”は実にユニークで逞しい。様々な形態のアストレイが地球上を長距離にわたって自発的もしくは非自発的な旅(あるいは放浪、強制移住)をして暮らしたのである。アストレイは最強の適応能力を持っている。悪条件の中で、その場その場で工夫して協力して生きてきた。環境に変化適応することを得意とするのである。彼らの知恵は人間が継続的に生活を維持することに役立つ方法で、我々人類にとって大変貴重なものである。
本書は、様々な形態のアストレイが、厳しい生活環境の変化の中でその適応能力を駆使して逞しく生き延びてきた生き様を紹介する。読者はアストレイの豊かな知恵が地球上の我々人類の未来にいかに密接に関わっているかに驚かされるに違いない。
オーストラリアのアボリジニの古代宇宙論、古代ギリシャの民主主義の起源と災害を克服した物語、ユーラシア草原の遊牧民の帝国の強みとその文化、十字軍に参加したキリスト教徒が想像した東方の王プレステール・ヨハネの放浪の旅、1930年代にロシアがウクライナに行った強制移住、1950年代に毛沢東主義中国が農民に対して行った強制移住、さらには今日の難民の動きやネット空間内での自由な移動などを紹介する。彼らの歴史を見ることで読者は困難な状況下で何が有効であったかを学ぶことができる。アストレイの知恵は現代の我々に一番重要なものかもしれない。読み進むほどにワクワクしてくる。アストレイの謎に鋭く迫る一冊である。