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原題 About England
著者 David Matless
ページ数 352
分野 英国史/景観/地理
出版社 Reaktion Books
出版日 2023/04/01
ISBN 978-1789146912
本文 イングランドと聞くと、サッカーのワールドカップに常連の、イギリスの強豪チームを思い浮かべる人も多いだろう。イングランドはイギリスの一部でありながら、全人口のうち八割以上が住んでいるという。その多くの人が、自分たちをイギリス人というよりイングランド人だと思っている。
イギリスの欧州連合離脱(ブレグジット)の話が持ち上がったころから、イングランドらしさについて改めて問われるようになった。本書は、1960 年代頃からのイングランドの様子やイングランドらしさがどのようなものだったかを解説する。本書は、政治、大衆文化、地理、芸術、建築、映画、音楽など、実にさまざまな分野から多角的にイングランドを考察する。
イングランドの置かれた文化的なつながりは、とても複雑だ。地方やイギリス国内のイングランド以外の地域との関係を考えながら、ヨーロッパ大陸の国々や国際社会、帝国の崩壊、グローバリゼーションにどう向き合っていくべきかを、著者は説く。さらに、田舎、都市、郊外、工業都市までの、実際に目に入ってくる姿から、今のイングランドらしさを語る。また、著者は過去 60 年間に起こったことが21 世紀の不安や懸念につながっていると主張するが、それらの出来事がなぜ、どのように起こったのかを明らかにしている。イングランドにおける現代の文化的および政治的な成り行きをわかりやすく説明している一冊だ。