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原題 Navigations
著者 Malyn Newitt
ページ数 368
分野 歴史
出版社 Reaktion Books
出版日 2023/07/13
本文  かつてルネサンス芸術の研究においては、ダ・ヴィンチなどの偉大な芸術家に焦点が当てられたが、近年では作品制作に実際にたずさわった工房の協力者たちに注目が集まりつつある。ポルトガルが大きな役割を果たした大航海時代のさまざまな発見についても、かつてはヴァスコ・ダ・ガマやマゼラン、エンリケ航海王子といった少数の著名人とその偉業に研究が集中していたが、本書は一般の人々にも焦点を当ててこの時代を読み解こうとする試みである。

世界有数のポルトガル史の専門家マリン・ニューイットは、マゼランやヴァスコ・ダ・ガマなどの著名人の業績にももちろん目を配りつつ、15世紀から16世紀初期のポルトガル帝国が世界史に果たした役割を再検討する。女性も含め、これまであまり注目されなかった一般民衆――実際にヴァスコ・ダ・ガマやカブラルの艦隊の舵をとったパイロットや、要塞を守った兵士たち、植民地に定住した人々など――に注目するとともに、ポルトガルの海洋探検によってイベリア半島を追い出されたユダヤ人や、奴隷としてカラヴェル船でヨーロッパやアメリカに連れ去られたアフリカ人の動きもたどっていく。

 ルネサンス期は、文学や美術などの芸術が再生したばかりでなく、科学技術や航海術も大きな進展を見せた。その中でポルトガルは大きな役割を果たし、以後のヨーロッパを形成するうえで根本的な影響を与えた。本書に描かれるポルトガルの姿は、世界のあらゆる地域が経済的・文化的に関連しあうグローバリゼーションを先取りするものであり、新たな歴史認識を促してくれることだろう。