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原題 A Little Song (Ein kleines Lied: Als ich noch ein Wiener Sängerknabe war)
著者 Georg Spiegelhofer
ページ数 525
分野 音楽/エッセイ/歴史
出版社 Verlag Der Apfel
出版日 2023/04/25
ISBN 978-3854505259
本文 2023年、世界的に有名なウィーン少年合唱団は525周年を迎えた。これを機に、著者は同合唱団で過ごした4年間を振り返る。525ページにわたる豊富な挿絵付きの本書を通じて合唱団の舞台裏をのぞくことができ、幅広い年齢層の読者が楽しめるだろう。

ヨーロッパ、カナダ、アメリカでの公演や、政治的背景により中止となった日本公演、舞台上でのストライキ、255回にわたる合計約25万人の観客に対する満席のコンサートに加え、1961年にはシュテファン大聖堂でアメリカ大統領ジョン・F・ケネディを前に行ったパフォーマンスから団員たちの声変わりにまつわるエピソードまで、ウィーン少年合唱団での生活について紹介している。

少年合唱団の団員たちはヴィーナー・アウガルテン宮殿での滞在を経て、一生の友となった。現在でも、92歳の指揮者ゲアハルト・ラング(当時、著者が所属していた合唱隊のリーダー)は、年を重ねた仲間たちとの温かな関係を大切にしている。本書の執筆は著者とラングとの約束であり、著者は50歳、60歳、70歳と挑戦を重ね、最終的に老後の生活にコロナ期が重なった75歳で本書が誕生し、約束が果たされることとなった。

合唱団での生活の様子が、著者の言葉でリアリティをもって綴られている。細かいエピソードや会話がたくさん盛り込まれ、当時の時代背景や心理描写もわかりやすく説明されており、読者を引き込んでゆく。