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原題 The Rise of the Global Middle Class
著者 Homi Kharas (Author)
ページ数 216
分野 経済、社会、歴史
出版社 Rowman & Littlefield Publishers / Brookings Institution Press
出版日 2023/11/01
本文 貧困は、古来多くの人々が研究し、取り組んできた問題である。学者や政治家、評論家の注意は、ほとんど、最富裕層か最貧困層に集中していた。つまり、富裕層の富を公平に分配することにより、貧困層をいかに引き上げていくかということである。そのため、最も大きな割合を占める層である中流階級には、その存在感に見合うだけの注意が払われてこなかった。この中流階級の研究に焦点をしぼっているのがカラスだ。

長年「世界の中流階級」の研究に取り組んできたホミ・カラスは、本書で、世界的に増加の一途をたどってきた中流階級の人々が、今後の世界の成長、繁栄、安定、幸福に貢献することができるかどうかにについて考察をめぐらしていく。

カラスはまず、世界の中流階級の歴史を時代順にたどる。ヴィクトリア朝イギリスに誕生した中流階級は、西洋を中心に勢力を伸ばし、グローバリゼーションとともに第三世界も巻き込んでいく。そしてその波は最も人口の多い中国、インドをも取り込み、2030年には50億もの人々が中流階級の仲間入りをする見込みである。わずか二世紀の間に、世界人口の半分が中流の生活を送れるようになったのだ。カラスは、このような進歩が可能になった歴史的条件を確認するだけでなく、世界の中流階級が貧困に落ち込まないため、そしてこの中流にまた数十億の人々が加わるために私たちが何をすべきかという未来の課題も明らかにしてくれる。この難題に立ち向かうためには、世界中の人々の協力、社会的結束,質の高い教育、環境に配慮した持続可能性、最新デジタル技術の有効活用などが必要となる。あらゆる社会の成功、そして世界経済の存続は、健全な中流階級の形成にかかっているのだ。